11月9日

たっぷり寝たらだいぶ具合が良くなった。気がする。いつもよりほんのすこし早く起きてほんのすこしゆっくりした朝。

 

夫を起こしに行くと毎朝必ず「あと十分」「あと五分」と私に膝枕をせがむのでむにゃむにゃ言う夫を膝に乗せて十五分ほどぼうっとする。朝の忙しい時間に。この時間が私はけっこう好きで、夫の二度寝タイムのためにわりと余裕を持って起きることにしている。朝のばたばたイライラしがちな時間に二度寝をせがまれるのは良いもんだ、数年後だってこの要望を快く受け入れて十五分ぼうっとしていられる私でありたい。

私の膝でもっとこのアタマを寝かせてあげたいと思うが、無情にも十五分はあっという間に過ぎる。

 

家を出る直前、「イヤンホホが見つからない歌」を唄いながらイヤフォンを探していたら夫が自分のお高めのイヤフォンを貸してくれた。「耳にグって押し込むやつだからね」「赤いラインのほうが右だからね」と言ってイヤフォンを渡す夫に対して「耳に押し込むのはわかるもん」「赤以外のラインはあるの」などと言う。かわいくない。夫は「遮音性が高いから気をつけるんだよ」と言った。十分に気をつけながら二十分歩き、職場へ。

 

仕事。脳みそこんにゃくの同僚が辞めて以来、ほとんどまるっと私がこんにゃくの仕事を請け負っていて毎日忙しい。でも暇より忙しいほうが良い。しかも私の給料は変わらないのだから責任がなくて良い。自分の仕事を済ませ、こんにゃくの仕事をやる。回らない、と思うが全部回らなくて良い。適度に息抜きをしながら二人分の仕事をやる。

もともとこんにゃくの仕事の半分以上私がやっていたみたいなものだし実際増えた負担はそんなに多くない。全然やれる。ああ忙しい。でも暇。効率よく仕事を済ませて行くのは楽しい。その効率の良さは、誰の目にも触れない。

途中途中、同じ職場のおばちゃんに話しかけられて作業が止まる。どうでもいい話で呼びつけられる。にこにこして対応してしまうからいけないのかもしれない。でも私は絶対に悪くない。長野に来てよくわかったことがどの地域でもめちゃくちゃ喋るおばちゃんはめちゃくちゃ喋るしめちゃくちゃ喋るおばちゃんは何処にでもいるということ。ああはなりたくない。本当に、ああはなりたくないなあ。

 

気温五度。風の強い暗い道をてこてこ歩いて帰宅。ここは本当に風が強い。山に囲まれているから仕方ない。標高が高くて山風が吹き抜けるのだからそりゃ寒い。仕方ない。私はこの町が好きだ。

玄関を開けるといい匂い。義母が白菜と豚肉のミルフィーユ鍋を用意してくれていた。嬉しい。わーい!と喜んで鍋に近づいたら「見た目がよろしくないから蓋を取らないで食べて!」と言われた。それは難しいねえ。

義母は知り合いの仕事の手伝いに行くと言うのでお見送り。煙草を吸いながら刺身を茹でる。庭に来る猫のごはん。お湯を沸かして切り身を入れてしばらく茹でて、皿にとって身をほぐしてよく冷ます。庭に来る猫はこれをよく食べる。まあカリカリもちゅ〜るもよく食べる。大きくなあれ。

 

ワイン飲みながら読書、煙草。夫は残業。はやく帰って来て欲しい、と思いながら、布団をほんのちょっと整える。

明日、夫は休みなので朝の二度寝タイムがないんだな、と思うと寂しくなった。